ストロボ撮影時のISO感度と絞り値について色々考えてみた

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久々の撮影ネタです。ストロボを使用したイベント撮影時のISO感度と絞り値の設定についてあれこれ考え直してみました。

どうも管理人はストロボ撮影が苦手らしく、今年の5月にクリップオンストロボを購入してから半年近く経つというのに未だに使いこなしの域に達しておりません。11月30日に秋葉原で開催されるメガホビEXPO 2013 Autumnを控え、イベント撮影時の設定についてあれこれと試行錯誤を繰り返しています。

今回、ストロボ撮影時にISO感度と絞り値を変化させ、画像の仕上がりにどのような変化が現れるかテストしてみました。イベント撮影時の設定については、あまたのひかりさんでも色々と試されているようで、こちらの記事後半が非常に参考になります。使用機材が近い(殆ど同じ?)こともあり、かなり勉強になりました。夏のワンフェス以降、イベント撮影に関して色々と悩んでおりましたが、突破口が見えてきたような気がします。

 

■使用機材

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テストに使用した機材は今までと同じ構成です。ディフューザーはLQ-103 ウルトラソフトを使用しました。

  • カメラ:PENTAX K-5(APS-C)
  • レンズ:TAMRON SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di
  • ストロボ:PENTAX オートストロボAF-540FGZ
  • ディフューザー:ルミクエスト LQ-103 ウルトラソフト

 

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撮影台を上と下から適当にライティングして、カメラを三脚に固定してテストを行いました。焦点距離はズームレンズの50mm付近(75mm相当)を使用しています。

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この状態で発光させると終始露出オーバーとなったため、ストロボ側で発光量を-1.5に設定しました。これは使用するレンズによっても変わってくると思いますので、あまり参考にならないかも知れません。

 

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撮影は全て横構図で行い、左右の不要な部分をトリミングしています。

上記のような設定でF13・F8・F5.6の絞り値ごとにISO感度を変更し、画像にどのような変化があるかをテストしてみました。感度を変更することでストロボの発光量がどのように変化するか、画像の仕上がりがどう変化するかに着目してください。

■絞り値…F13(ISO100~3200)

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■絞り値…F8(ISO100~3200)

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■絞り値…F5.6(ISO100~3200)

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■まとめ

変化を分かりやすくするため、一覧にまとめてみました。相対的な関係を見るにはこの方法が一番です。横軸がISO感度・縦軸が絞り値になっています。

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こうして並べてみると、ISO感度を上げるほど、また絞りを開くほど、フィギュアの後ろに落ちる影が弱まっていることに気付かされます。これは、増感するほどストロボの発光量が抑えられている証拠です。また、表を縦に見ていくと、同じ感度であっても絞りを開くことで同様の効果が得られることが分かります。一方、感度を上げると環境光の影響が強くなりますので、若干色味が変化して見えるところもあるかも知れません。

もうひとつ、面白い事に気付きました。それぞれの絞り値ごとに、影の出方が近い画像をピックアップした場合、ISO感度と絞り値の間に相関関係があるという事です。露出について良くご存知の方は「そんなの当たり前だろ!」と仰るかもしれませんが、これは感度と絞り、ストロボ発光量の関係を知る上で面白いポイントだなと感じました。ストロボ発光量を一定に保ったまま、感度と絞りで露出の綱引きをしているようですね。

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影の強さから推測するに、F13・ISO感度1600の画像と、感度を1段下げ、絞りを1段強開いた画像のストロボ発光量は同程度になっています。これはISO400の画像についても同じです。

逆の見方をすれば、できるだけ低感度を使用してストロボ発光量を抑えるためには、それなりに絞りを開いてやる必要がある、という事なんですね。これは当たり前の事ではあるのですが、あらためてテストしてみてなるほどな~と今更感心しておりました。

一般に、ISO感度は低ければ低いほどノイズが少なく、高画質です。上記の3枚の部分拡大画像でノイズ量を見てみましょう。

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感度が高くなるほど、ノイズの量が増えているのがお分かり頂けると思います。こちらの画像はRAWデータをLightroomに読み込んで、ノイズ軽減処理を一切行わずに書き出したものですので、ノイズリダクションをかければ少しはマシになるかも知れません。

 

高感度ノイズのテスト

次に、感度ごとのノイズ量を見てみる事にしました。自分のカメラの増感時の上限ラインを予め知っておくことは重要です。

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使用カメラK-5で、ISO感度ごとのノイズ量テストです。上記のような撮影画像の一部を切り出して、一覧にまとめてみました。カメラを縦位置で三脚固定してF13まで絞り、感度のみを変更してテストしています。こちらのテストにはストロボは使用しておりません。ハイライト補正がONになっていたため、ISO100を撮り忘れました…。orz

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感度を上げるごとにノイズが増えていくのがわかります。個人的には、上段右端のISO1600がフィギュア撮りに使える限界上限ラインかなと感じました。これ以上増感するとディテールの情報がどんどん失われてしまうためです。解像力の高いローパスレス機であれば、ISO3200まで使用可能かも知れません。

 

被写界深度テスト

絞り値は被写界深度に影響を与えます。それぞれの絞り値ごとに、どの範囲までピントが合うか検証してみました。以前にもテストしたことがありましたが、カメラ・レンズが異なっていますので、イベント撮影用の構成でもう一度テストしてみました。

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部分ごとに切り出して、絞り値ごとに変化を見て行きましょう。カメラは縦位置でズームのテレ端75mmを使用しています。

■F2.8

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このレンズの「絞り開放」です。被写界深度が浅くなりすぎるため、イベント・レビューともに絞り開放で撮る事は殆どありません。

■F4

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1段絞ると、少し引き締まった印象になりましたが、顎の辺りは少しボケていますね。腕のキュウベイはまだまだボケボケです。

■F5.6

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お顔の周辺にだいぶピントが来るようになりました。レビュー撮影ではボケを活かしたいときにこの絞り値をよく使用します。瞳にキッチリピントを合わせられるなら、イベント撮影でも使えるかもしれません…。

■F8

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まどかのお顔に関して言えば、ここまでピントが来れば十分かなという印象。ピントの問題があるので、個人的にはF8くらいまでは絞りたいなと思っていたり…。

■F13

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レビューで多用する絞り値です。まどか・キュウベイともにしっかりピントが来ています。

■F16

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F16以上に絞っても大きな変化はあまり見られません。逆に回折現象の影響でかえって像が甘くなる事もあります。管理人はどうしても深度を優先したい場合のみ使用しています。

結論としては、F5.6は瞳にピントをキッチリ合わせられるなら何とか使用可能で、これより絞りを開くとボケが大きくなるのでイベントでは使いづらい。安心感して使えるのはF8以上かな、と感じました。あまたのひかりのハルカミチ氏はF5.6とF8の中間の「F6.3」という数値を導き出されたようで、もしかするとこの数値は黄金の絞り値となるかも知れません…。

 

■まとめ

実は7月下旬に行われた夏のワンフェス以降、撮影設定について考える事が多くなり、少し撮り方を変えた方が良いかも知れない…という思いが強くなっていました。『出来るだけ低感度で、絞り込んで撮る』というのが管理人の撮影設定だったのですが、イベント撮影においては、この撮り方は改めた方が良いのかもしれない…と思うようになったのですね。(これまでの撮影設定については前回のメガホビ反省会に失敗談も含め色々と記載がありますので、そちらをご参照いただければと思います。F11~13、ISO160の低感度維持、というのがこれまでのスタイルでした。)

では、なぜ撮影設定を変えようと思ったのか?

一番大きな理由は、ストロボバッテリーの温存とチャージ時間の短縮です。

夏のワンフェスでは会場風景等含め1000枚以上の写真を撮影し、そのうち750枚前後をイベントレポートとしてブログに掲載しました。撮影枚数で見れば過去の自己記録を更新しましたが、同時にワンホビブースでは多数の撮り逃しを出してしまいました。これは大失態です。

持参したエネループプロは12本(3セット分)でしたが、このうち最後の3セット目を半分程度まで使ったところで時間切れとなりました。あと1時間あれば、 もう少し撮影枚数は伸びたかもしれませんが、ほどなくストロボのバッテリー切れであえなく退場となっていたかも知れません。

これまでの撮影設定では、ストロボのバッテリー1セットで250~300ショット撮るのが限界で、これではいくらバッテリーがあっても足らん!と感じていたのですね。

バッテリーの消耗が激しい原因は、暗い会場内で極端に絞り込み、低感度で撮影しているため、ストロボの発光量が大きく、1ショットごとにバッテリーを大量に消費するのが理由と考えられます。また、撮影後のストロボチャージにかかる時間も全体的に長く、強発光した場合などはチャージに数秒かかるケースも少なくなかったように思います。 結果として、フィギュア1体あたりにかける撮影時間が長くなってしまい、失敗した時もチャージを待たなければならなかったりして素早い連続撮影が出来なかったのです。フィギュアの占有時間が長くなると周囲にも迷惑がかかりますので、ここら辺を変えたいという思いが強くありました。

もう一つの理由は、夏以降サブ機としてGRを導入した事にあります。このカメラを携帯するようになってから、展示フィギュアをストロボを使わずに撮影する機会も増えたのですが、撮影データを現像していて高感度での撮影も悪くないな、と感じ始めていました。ストロボを強発光させて撮影した画像に比べ、自然な感じに仕上がるのですね。

■GRの撮影データ(ストロボ不使用)コトブキヤ秋葉原館様にて

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EXIFを見返したら、両者ともノーストロボ・F8・1/60・ISO800で撮影していました。

ストロボ強発光の場合、フィギュア表面がテカったり強い影が落ちたりするのですが、ある程度照明されていれば環境光だけでも十分撮影は可能なのですね。光源の色温度がバラバラだったりすると現像が大変なんですが、こういった撮り方もあるのだな、と気付かされたのでした。

メガホビの開催は11月30日…。年内の機材更新は予算的に難しい所がありますので、現状の機材のまま撮影に挑むことになりそうです。高性能な機材は魅力的なのですが、撮り方を工夫するなど、まだまだやれる事はあるような気がしています。ディフューザーの選択も重要かも知れませんが、撮影方法をしっかりと考える事も大切だなと痛感したのでした。

今回のテストで、高感度を積極的に使い、状況によっては絞りをある程度まで開くことも重要なのだという事が分かりました。感度はISO800-1600・絞りはF8前後から柔軟に選択、というスタイルで行こうかなと考えています。個人的にはISO800・F8の仕上がりのバランスが良く見えたため、このあたりを中心にして撮影するかもしれません。

メガホビの撮影時の対策につきましては、開催前に何らかの形でまとめなおそうかなと思っています。

以上、久々の撮影ネタをお送りしました。



前後の記事


“ストロボ撮影時のISO感度と絞り値について色々考えてみた” への3件のフィードバック

  1. 湯片井たけひろ より:

    こんばんは、Twitterにて相互フォローさせていただいている者です。

    自分も同じくPentaxのストロボを使っていて、
    「ストロボ撮影が苦手」だな、と同じことをずっと思っていたのですが、
    最近、「もしかして違うんじゃないか?」ということに気付きました。
    Pentaxは、TTLの場合、必ずフル発光しているような気がします。

    たとえば、TTLで発光させると、どんな絞りでも必ず同じチャージ時間がかかりますが、
    Mモード+フラッシュ側もマニュアルにして1/2や1/4で発光させると、2連射、4連射してからチャージ待ちになります。
    絞りを変えて同じ明るさに写るのは、単にSSが自動で変わってるだけで、
    必ずフル発光してパワー使い切る仕組みなんだと思います。
    (CanonやNikonなどの他社が、そうじゃない仕組みなのかは分かりませんが、
    Nikonユーザの人がそれっぽいことを言ってたような…)

    以来、フラッシュを使うときは必ずマニュアルで発光量を調整するようにしたら、
    ようやく「使いこなせてきた」という気になってきました。
    1日使ってもエネループ(黒)4本で済んでます。
    ワンフェス等のイベントで明るさが変わる状況でのMモード使用は
    なかなか厳しいかもしれませんが、試されてみてはいかがでしょうか?

  2. hobbyholic より:

    絞りと感度のテスト画像を一枚にまとめたものにシャッタースピードを記載していますが、そちらを見る限りではストロボ側で発光量の調整が行われているはずですので、「TTL時に必ずフル発光になっている」というのはちょっと疑問ではあります。(感度を上げてもSSがずっと1/100同調のままという事があるため)

    ただ、ストロボはマニュアルで制御した方が露出が安定するという話は以前聞いたことがあり、これは今度試してみようかと思います。CやNに比べると、このあたりの制御がペンタの弱い部分なのかなと思っていたりもします。^^;

    あと、K-5にはバウンスストロボの露出オーバーに関する問題が潜在的に存在するという話も聞いた事があり、これがK-3で解消されると嬉しいなと思っています。

    貴重な情報ありがとうございました。

  3. 湯片井たけひろ より:

    なるほど、SSが同じならば発光量は変わってると思われますね…。
    なんか、Pentaxのストロボはどこに行っても評判悪いようにしか書いてないので、
    オートに任せるのは無理なのかな? と思ってマニュアル使ってます。
    マニュアル制御やK-3でもし試されましたら、感想を記事等で発信していただけるとうれしいです。
    長文コメント失礼いたしました。

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